幼稚園ではたらくことに
興味をもっているあなたのために
絵本「おばけのマールシリーズ」の
絵を描いている絵本作家の
なかいれいさんが
幼稚園にインタビューに行きました。
- 恵庭幼稚園
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学校法人リズム学園
恵庭市大町4丁目1-11
お話をしてくれた方々
● 井内聖学園長
● 浅野大輝さん 保育士経験3年目
● 藤澤侑香さん 保育士経験1年目
ITC化で保育の時間をたっぷり
そして毎日、定時に帰宅。
Q: この園での働き方や保育に対する思いをお聞かせください。
井内聖学園長:
当園は完全ペーパーレスにすることで先生の事務仕事が激減したため、毎日定時で帰れるんです。早い段階からICT 化に取り組んでいるのですが、そのおかげで胆振東部地震で被災した時に被害を最小限に食い止めることができました。当時はやきた子ども園の園長をやっていてその日はお泊まり会だったのですが、夜中に被災して停電になり電話などが使えなかった時も、先生は各自のiPhone から保護者との連絡を取ることができました。ノートパソコンは全部バッテリーで動き、データもクラウドにアップロードしていたので、ネットさえ繋がれば全て読み込むことができました。職員室もぐちゃぐちゃになったのですが、紙がなかったので倒れてくる書棚もなく、ICT 化のおかげで危機管理への対応もスムーズでした。
情報共有もできるのでフリーアドレスにし先生方の固定机が必要なくなった分、職員室の無駄スペースもなくなりました。先生が耳に引っ掛けるワイヤレスイヤホンを使って、iPhone を無線代わりにして業務連絡をとったりと、中と外とで情報共有が図れます。
当園の考え方は「管理しない」。管理者を置いてしまうと、全ての情報が管理者に紐づけられてしまい、その人じゃないとできない仕事になってしまいます。今は、共同で仕事をするので、全ての情報をミエル化することで、結果までに行き着く過程段階も見えるので、仕事のやり方を学んだりも出来ます。
ICT 化の一番の理由は、先生方に保育をする時間を確保してもらうためです。先生方は保育をしたくて就職したのに、それ以外の事務仕事などに追われていたら意味がない。
もちろん保育は徹底してアナログです。絵本は特に大切にしています。
ICT 化は労働環境はじめいろんな悩みから解消されて、
先生たちは保育に集中できそうですね。
先生のお子さんを
大切にしない幼稚園はおかしい!
Q: 他にはどんな特徴がありますか?
井内聖学園長:
新卒や中途で入られる先生が働き方の不安を解消できるよう、相談できる相手をつけるメンター制度の仕組みを目下設計中です。具体的なやり方を作るのは現場の先生方で経験年数に関係なくをみんなの意見を取り入れるようにしています。
先生方が保育のことで悩むのは大いにいいと思っています。その一方で、事務仕事や人間関係や待遇などの子どもに関係ない部分では悩んで欲しくありません。先生自身の子育ても大切にするべく住宅手当や子ども手当を充実させていますし、育児期間を考慮した限定正社員制度もあります。また、キャリアについてもグレード制度も導入して、自分がどんなキャリアアップをしたらどれくらいお給料が貰えるのか、すべてミエル化しているのです。先生方の保育資質向上のための学びには全面的にバックアップしています。だからと言って生き方の強要をしたりはしません。僕は「保育をよくしたい」という考えを追求しているだけなのです。
副業だって応援します!
制度を整えることによって、先生たちは生き方の選択肢が広がる。先生方は雇われるのではなく、自分で園を選び、収入を自分で決まることができるのです。どんな保育士や幼稚園教諭として生きていきたいかを自分で決めることができると人によって考え方が様々ありますが、互い違いを理解してもらっています。教育・保育・地域振興に関わる内容なら副業も認めています。
中には起業したくてうちで働いている先生もいます。
生き方の選択肢がこんなに自由だなんて、先生方のやる気につながりますね。
保育士や幼稚園教諭という仕事がますます魅力的に感じられました。
子どもたちと一緒に成長。
Q: 幼稚園で働いていて感動した体験をお聞かせください。
浅野さん:
一年目の時に担任を持たのですが、その子どもたちを昨年卒園させたことがとても嬉しかったです。4月に入園したての時を振り返ると大きく成長して巣立っていくのを実感し、僕にとっても初めての卒園式でしたので感激して泣きました。日常的には自分が担任ではないクラスや違う学年の子どもたちにも「だいきせんせい!」と、名前を覚えて呼んでくれたり、遠くからも大きな声をかけて懐いてくれることがとても嬉しいです。
保護者のことばに感動。
藤澤さん:
一番感動するのはやはり子どもたちの成長です。一年振り返った時に、言葉にもできずただ泣いているだけだった子が、「できないから てつだって」と言えるようになっていたり、簡単なことも出来なかったのができるようになっていたのを見て、その子が一生懸命練習していた背景を思い起こしたりと、一人一人がそれぞれに成長する姿を目の当たりにしました。
保護者との関わりの中では、一年間侑香先生が担任で安心して一年過ごせましたと言ってもらえたりできることなら来年もと言葉を添えていただけたことがすごく嬉しかったです。
新人ですと特に不安があったと思いますが、
頑張った甲斐がありましたね
できなくてあたりまえ。
Q: 幼稚園で働くことに不安を抱えている若い方が多いようです。
浅野さん:
やはり1 年目の時は行事や制作やピアノなど全部が初めてのことなので不安でした。でも、できるはずがないしできなくて当たり前、とにかく任されたクラスの子どもと向き合おう、できなかったことも次できたらいいんだと割り切って考えました。子どもが好きだから原点に返って、正直にできない部分も曝け出して関わるようにしています。先輩たちに怒られたと感じたこともありましたが、今思うとスキルアップを促すための助言でしたし、取り方次第だと思います。
子どもが好きという気持ちにブレがないんですね。
藤澤さん:
1年目で担任が決まった時、嬉しいのと同時に不安もありました。全然何も分からない中で、他の先生たちがやれているように子どもたちを成長させてあげられるのかなと。実際やってみると、不安よりも楽しさや嬉しさの方が勝って、毎日子どもたちの顔を見るだけで安心できて不安なんて吹き飛んでしまいました。むしろ子どもたちみんなに助けられたと感じています。
いざ飛び込んでしまえば大丈夫と強い気持ちになれたんですね。
Q: 幼稚園で働く。子どもと仕事をする上で大切にしている信条や志をお聞かせください。
浅野さん:
子どもにはしっかり向き合うようにしています。子どもの反応は顕著に出るので、毎日意識して子どもの目線で物事を考え、かつ、凝りかたまらないようにしています。保育の専門書も読みますが、もしかしたら違うところにヒントがあるかもしれないので、いろんな目線で物事を考えるようにしています。例えば準備も片付けも含めて子どもと一緒に生活をすることを一番大切にしています。その上で大人の思いもきちんと伝えるようにしています。子どもたちにとってお兄さん的な近い存在でいたいと思います。
大人とのコミュニケーション力も培われていきそうですね。
藤澤さん:
子どもにとって安心できる存在でありたいと思っています。積極的な性格な子もいれば内気で輪に入れない子もいるので、違いを分かってあげられるよう見ていきたいです。子どもはちょっとした触れ合いがあるだけでも、安心して自分で行動ができたりしているのでスキンシップも大事にしています。先生が決めたことをやるのではなく、子供の意見を聞き入れてみんなで一緒にやってみたり、トラブルがあった時も一人一人の声を聞いて一緒に解決策を考えたり、成長を引き出してあげるようにしています。
伸び伸びと自信を持って発言できる子どもに成長しそうですね。
男性保育士もだいじょうぶ。
Q: まだまだ女性の方が多い職業ですが、
男性の保育士を目指す人に不安を解消するメッセージをお願いします。
浅野さん:
女性と同じ土俵に立とうとするのではなく、男性だからこそ出来ることも沢山あります。その前に、自分の強みをきちんと持って入れば、それは技能的なことである必要はないし些細なことでも構わない、自分を見失わないことが大切です。
全ての職業にも通じる心強いメッセージですね。
Q: 他に学生さんたちにお伝えしたことはありますか?
藤澤さん:
学生時代にボランティアのサークルに所属していたのですが、その時に子どもたちのイベントを企画しました。実習以外でも子どもと関わる機会が多く、プチ先生のような体験をしたのは良かったなと思っています。
子どもとどんなふうに関わるのか前もってイメージができたんですね。
浅野さん:
自身が子どもの時にやった遊びを振り返ってみるのもいいと思います。自分の引き出しで子どもと一緒に遊ぶことが出来るから、いろんな経験をして欲しいなと思います。
いろんな遊びを知っている先生がいると子どもたちも楽しいですね。